2025.09.20 「台湾予算」とLRT構想 ‐ 行政の錦の御旗か、市民の足か
- 道家やすなり
- 9月20日
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「台湾予算」とLRT構想 ― 行政の錦の御旗か、市民の足か
今回の岐阜市議会9月定例会で補正計上された「台湾視察予算」。その額は320万円。県知事が旗を振るLRT構想の調査経費として盛り込まれたものである。しかし「鶏鳴狗盗」のごとき小細工を思わせるこの計上に、果たして純粋な調査以上の思惑は潜んでいないのだろうか。
市長は来年2月に選挙を控え、「長い物には巻かれろ」とばかりに県知事との歩調を急ぐ姿が目立つ。台湾訪問の日程に合わせ国内公務を割愛するほどの慌ただしさは、「急いては事を仕損じる」の教訓を忘れたかのようである。視察なら通常公務の一環として足を運べばよいはず。それを特別枠で設ける裏に、何やら「縦横無尽」の調整があるのではと市民は勘繰ってしまう。
そもそもLRTは夢のある構想とはいえ、導入には巨額の費用がつきまとう。世界各国では1キロ20~40~40億円。宇都宮市に至っては47億円と報じられた。古来、高速道路が1キロ40億円といわれるが、地方自治体にとっては「屋上屋を架す」ような負担である。山積する課題の中で、行政が直営で巨額事業を担うことが「本末転倒」とならぬ保証はない。
一方、市内をくまなく走るコミュニティバスは、ついに19団体で全域をカバーする体制が整った。だが現実は「帯に短し襷に長し」。1周1時間超の路線が多く、運行経費の制約から1台のみという状況だ。もしLRTに投ずる資金を、市内バスの「一回り30分構想」に振り替えたなら、利便性は飛躍的に高まり、市民生活の向上に直結するだろう。足元の暮らしこそ大切にすべきではないか。
さらに議会には、鵜飼観覧船の新造費も計上された。16人乗りで一艘約3,000万円、貸付料は一日40万円という超高級仕様である。市は「富裕層の誘致」を唱えるが、年間20回の稼働を見込む計算は「画餅」に等しい。現在は8万人の乗船客。往時は民間の船宿が競い合いで30万人を超え、経営努力で客を集めていた。今や市営一辺倒となり「温室育ち」の運営では、費用対効果の発想など望むべくもない。観覧船は本来、サービスではなく商売であり、民間の知恵と活力を欠けば「水清ければ魚棲まず」となるのは必然だ。
LRTも観覧船も、本質は同じ。
行政が「官製市場」を作ろうとする時代は終わりを告げつつある。今求められるのは民間との連携であろう。頭脳明晰な行政マンが揃っている今だからこそ、「温故知新」の精神で市民の足、観光の未来を真に支える政策を練るべき時ではないか。

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