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2025.10.28 紙幣が映す日本の時代像

  • 執筆者の写真: 道家やすなり
    道家やすなり
  • 10月28日
  • 読了時間: 2分

紙幣が映す日本の時代像

-昭和・平成・令和、その顔ぶれに込められた国の意思-

日々手にする紙幣は、単なる支払いの道具にとどまらない。そこには、国が「どのような社会を目指すのか」という時代のメッセージが込められている。紙幣に登場する人物は、国が自らの歴史と未来像をどの様に語りたいかその象徴である。


戦後復興期の昭和には、百円紙幣や一万円紙幣に聖徳太子が描かれた。国が荒廃から立ち上がるためには、まず精神的な支柱が必要だった。古代に国家体制と理念を築いた太子を「国の顔」としたのは、日本が歴史的連続性と共同体としての結束を再確認し、「もう一度、ここから立て直す」意思を国民に示すためであった。高度成長に向かって国民が同じ方向を見つめていた時代の象徴である。


やがて平成に入り、社会は成熟し価値は多様化していく。紙幣には、学問と自立を説いた福沢諭吉、世界に挑んだ医学者・野口英世、女性文学者として独自の道を切り開いた樋口一葉が並んだ。個人の努力や教養、そして多面的な生き方が社会の発展につながるという思想が、静かに紙幣から読み取れる。昭和が「一丸となる時代」だとすれば、平成は「それぞれが力を磨き、活かす時代」であったといえよう。


そして令和。新紙幣には渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎が登場する。いずれも近代日本の形成において欠かせない存在でありながら、その評価は「経済の倫理」「女性の教育」「科学と命」という、現代社会が向き合う課題と密接に重なる。多様性と包摂、持続可能な成長、世界と共に歩む知。いまの日本が目指す方向性が、肖像の選定に鮮明に表れている。

紙幣は、時代に選ばれた「日本の顔」である。そしてその顔は、次の時代を作る主体が、かつての英雄ではなく、私たち一人ひとりであることを示している。


渋沢が説いた「論語と算盤」は、利益だけを追う社会でも、理念だけで動く社会でもない、「人を尊ぶ経済」の実現を願ったものであった。津田は教育を通じて「誰もが学ぶことで自らを変えられる」と示した。北里は研究者として、「見えないものを恐れず、向き合う意思」の重要性を残した。これらは、いま私たちが立つ社会への、そして未来への問いかけでもある。

人口減少、国際環境の揺らぎ、価値観の多様化。その中で必要とされるのは、「分断」ではなく「共に生きる力」だろう。紙幣を手にするとき、そこに描かれた眼差しに、未来を委ねる我々自身の姿を重ねてみたい。時代を築くのは常に市井の人々であり、今を生きる私たちである。


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